避けることの出来ない天候に左右される農業ですが特に近年、地球温暖化の中で厳しい干害、湿害、冷夏、猛暑が各地で猛威を揮っています。その中で私たち農家は常に作物の不健康や病虫害を克服し、健康で美味しい作物を育てよう知恵を絞っています。
 しかし、現在の農業技術や考え方自体が実は抵抗力の弱い作物を育てる温床となっていることは誰も言おうとしません。これは事実で、その代表的なものが、現在農業で「常識化」している基肥チッ素(N)と有機物(堆肥や有機肥料)の大量投入ととにかく深く柔らかく耕こす方法です。土作りと称して大量の有機物や大量の化学肥料を投入するこの多チッ素に加え根が伸びやすいようにと深くフカフカ状態に耕こすことこそ生理障害と病虫害、そして品質不良の最大要因となっているのです。
 今の農業技術は大半が作物自体の研究はほとんどなく、土壌や肥料それに病害虫の研究が主体で言わば環境ばかりを重要視しています。人間でいえば、いかに快適に過ごせてご馳走を食べ続けることができるかであり、さらに治療のための薬のことばかり考えているようなことなのです。

 栄養を豊富に吸収し続けるのは果たしていいことでしょうか?私たち人間だったらそうなると肥満だの生活習慣病だので必ず不具合を生むでしょう。さらに言うと幼少時から贅沢な暮らしに依存すると大人になってしっかり自立することができるでしょうか。
 作物も同じで環境条件(養分豊富でフカフカ)の整った土で芽を出すと、自分で根を伸ばさなくても養水分がふんだんに摂取できてしまいます。これは完全に“子供の肥満”へ導き常に病院通い(農薬)の世話に頼らざるを得ません。そして一度贅沢をすると一生涯それを求めるようになり効率の悪い大食い状態になります。その結果環境の変化に弱くまた病弱な体質に陥ってしまいます。これでは充実した一生や成熟したものにはなりません。名前がコシヒカリだけなのです。
 栄養週期栽培ではわずかな堆肥以外の元肥(有機、無機肥料)は一切入れず作物自身の力で根を伸ばさせます。以後少しづつ適期栄養を与えることで、「生長速度は遅いが、地下部(根)を先に拡充し、徐々に地上部の成育に移行してゆく」ように導くのです。

 もうひとつの特徴は、年齢に応じた栄養のあり方ともいうべきもので、人間も植物も一生涯一様の食生活ではないという考え方です。つまり幼少期・青年期・老年期ではそれぞれ食べ物の趣向が変わってくる意味なのですが、そうお感じになりませんか!乳児(発芽時)は文字通りお乳(胚乳)のみで育つのが最高です。  徐々に離乳食として自分の根で外から自分の体に合わせて摂るのですよね。そして小学生から高校にかけてはモリモリ食べてみるみる大きくなります。肉でも何でもタンパク質が中心で体作りが最盛期ですが、青年期になると落着いてきますし、老年期では炭水化物が主体で小食のほうが健康でいられますね。
 このように時期毎に与える栄養素を変えていくことで過剰な地力と多肥多薬管理も無しに子実の稔りと体成熟を導きまさに実のあるお米が完成するのです。